マニア向け花火業者の悩みの話 加藤克典
2014年02月01日
こんばんは。加藤克典です。
このマニアックなコーナーをご覧になる方の中には、花火にも地域性があることをご存知の方は多いと思います。
ご存知でない方もいらっしゃるかと思いますが、その説明は他のWEBサイトにお任せして、マニアックなコーナーらしく、今回は「地域によって違う花火業者が頭を悩ますこと」を紹介します。
ただし、全て同業者さんからの受け売りです。目で見て確かめたわけではありませんし、その地域の同業者さんが全て同じ悩みを抱えているとは限りません。飲みながら聞いた話もあります。また、盛り上げるために多少のデフォルメをするかもしれません。ご了承下さい。
さて、今回のコラムを楽しむためには、花火工場がどんなものなのか知っておかなくてはなりませんので、軽くご説明します。
花火工場は法律によって、人の集まる場所から離したところに建てないといけないという決まりがありますので、殆どは人里離れた山奥に工場を構えています。
また、もし工場内のどこかで爆発が発生した場合に、全ての火薬に火が着いてしまわないよう、一定に距離を保って工程毎に建物を分けて工場を形成しています。これも事故時の被害を最小限に抑えるために、法律で決められていることです。
つまり、殆どの花火工場は山奥のだだっ広い土地にぽつんぽつんと小屋が散在している状態、ということです。
これが、地域によって異なる悩みとなって花火業者を苦しめます。
例えば、雪国では雪でどうにもならないため、2ヶ月近く冬休みをとる花火屋さんがあるそうです。その反動なのでしょうか、春から秋にかけて数ヶ月間休みがないそうです。
南の方の花火屋さんでは、降り積もる火山灰が大変だと聞いたことがあります。
話はどんどんマニアックになります。
北の方の日本海側では、冬に非常に湿度が高いため、水分に反応しやすい火薬を扱えないと聞いたことがあります。
ちなみに弊社のある愛知県では、冬は非常に乾燥しているため、水に反応しやすい火薬は冬に製造して、安定した状態にして夏まで保管してしまいます。
「星割れ」という、製造中、特に乾燥中に星が割れてしまう現象があります。愛知県では、初夏あたりでしょうか、だんだん暑くなってくる季節に星割れが発生しやすくなります。ただ、もう殆ど夏に向けた製造は終わっていますので、すごく大きな影響があるわけではありません。また、このタイプの星割れは、注意すれば回避できます。
これが、寒冷地の花火屋さんは、冬に星が割れるそうです。私たちからすれば、エライことです。三河弁で言うところの、ヤイヤイです。「エライ」も方言でしたでしょうか?
星は、大きくなればなるほど湿潤状態から乾燥状態への過程での歪が大きくなり、割れやすくなります。大きい星は、主に大きい花火用に使います。大きい花火ほど、製造に時間が必要です。星ができた後も、完成した花火になるためには、さらに星をつくる以上の時間が必要になってきます。夏は到来を待ってくれませんので、冬に大きな星が製造できないとなると、これはもう三河弁で言うところの、ヤーイヤイに該当します。
では愛知県は何もないかと言えば、そうでもありません。夏はとにかく暑いのと、冬場は殆ど雨が降らないので、乾燥による静電気の発生に非常に気を遣います。
さらに弊社に限った話では、1年中野犬が出ます。大きさはゴールデンレトリバーくらい、顔はアメコミの犬です。5~6頭群れになって出ます。弊社の工場長は、通勤中にオッコトヌシに道を塞がれました。夜の弊社工場は、非常に恐ろしいです。
どうでしょうか、地域による花火業者の悩みの違い。
マニアックな皆さんは、このような悩みを念頭に花火を見ると、悩みから生まれる花火の地域性が見えてくるかもしれません。
私は今夜も犬がいないことを祈りながら事務所のドアを開けて帰ります。またコラムが書けることを心より願っております。
おやすみなさい。