花火師コラム

秋の花火 加藤克典

2012年09月16日花火師コラム

こんにちは。
加藤克典です。

近頃はチョー忙しい夏も終わり、一息つこうか…、というわけにもいかず、秋の祭礼シーズンの準備に追われています。
秋の祭礼では夏と異なり、夜の打上げ花火よりも、昼間に打上げる音だけの花火や、手筒花火がメインになります。
そしてこのために、弊社の秋は、夏とは違った独特の雰囲気になります。

最も違うのは、地域の一般の方々がいっぱいいらっしゃることです。もちろん、皆さんお客様です。
こちらの方々にも、大きく分けて2パターンあります。

まず、昼花火をご注文される方々。
この方たちは大抵、「○○神社年行司」や、「○○祭花火係」といった役職をお持ちです。

私はこの業界に入って3年目になるのですが、最初はこの関係に大変驚きました。
こちらの方たちは、半数以上の方々が名を名乗ってくれません。
「今年の花火だけんどのん、…(三河弁)」で第一声が始まります。
あまりに皆さん名乗らないので、入社したての頃は名前をお伺いするのが失礼なのかと思い、どこのどなたかもわからないまま話をしていました。
以前にも少しご紹介しましたが、この方々が花火を自ら打上げられます。
今では、古き佳きご近所づきあいのような面があるように感じています。
3年目に入った私は、この関係にも慣れ、立派に三河弁で「どちらさんだん?」…とはまだ答えらません(笑)まだまだ修行の日々は続きます。

それから、手筒花火を放揚(出す)方々。
こちらの方々は、毎年同じ顔ぶれの、火遊びが大好きな大人たち。

手筒花火は本来、地域の方々が各部落で秘伝の技を持っており、地域の中で製造するものでした。
が、現在では火薬の取り扱いが厳しく規制されており、花火業者の工場等の火薬を取り扱う許可の与えられた場所でしか製造できません。
ですので、手筒を自ら製造して放揚される方々は、必ず弊社工場で作業をされるようになっています。多い日では、100人近くが出入りするでしょうか。

お察しの通り、この方たちも殆ど名前がわかりません。
そして、この方たちも私たちの名前を殆ど知りません。
大抵のビジネスでは名刺交換という行為がありますが、手筒界には全く無縁です。
毎年の顔見知り、だけど名前は知らない。そんな関係のまま火薬で真っ黒になりながら一緒に作業をします。
年配の方は名前も知らない相手に、「やーい!(おい!のやわらかい感じ)」と呼びかけていますが、こちらも私にはまだまだできません。
弊社だけでも名札を導入しようかとも検討していますが、こういう微妙な関係も愛おしいような気がします。

最後にもうひとつ。
知る人ぞ知る、火薬類消費許可申請。
もう、これが大変です。

花火は火薬を使用した大変危険なものなので、消費には厳しい規則があります。
この基準を満たして、その通りの書類を作成して、各行政の権限者から許可を頂かなくては消費ができません。
この書類を作成するのが、秋の祭礼の分はそれはもう大変なのです。

夏の花火大会の火薬類消費許可申請は、主催者の方々が主導して手続きをして下さったり、そうでない場合でも消費する火薬等は全てこちらで把握できていますので、書類の作成の技術さえあれば殆ど問題がありません。
しかし、秋の祭礼の場合はこれが全く異なります。
これ、消費基準満たせてません!という注文を頂いたり、誰がどの花火を出すんですか!?(手筒花火の放揚には、誰がどのサイズの手筒花火を放揚するのか決めておかなければなりません)ということがよくあります。

こうしててんやわんやしながらみなさんと一緒にワイワイつくり上げていくのが、秋の花火です。

というわけで、「秋の祭礼シーズンは10月がメインなので、8月とはさまれた9月は一息つこうか…」というわけにもいきません。台風と共に、下準備と火薬類消費許可申請の嵐がやってきます。

ということでみなさん。名簿はデータで下さいね◎

さ、田原の花火大会観に行ってこよーっと。

このページの先頭へ