火薬行政のやるせなさと、百雷の模型で結婚おめでとう! 加藤克典
2014年10月03日
みなさま、大変お待たせ致しました。
花火師コラムの再開です。
今日は花火の打上の法的でディープなお話です。
花火は火薬を使用した大変危険な物なので、消費は各都道府県や市町村の条例で厳しく管理されています。
が、この条例というのが曲者で、主催者様や我々花火業者、時には許可権者さんまでをも悩ませます。
例えば、花火の打上場所からの保安距離。
保安距離とは、一般の人々の安全を確保するために、花火打上場所から立入禁止にしなければならない距離のことをいいます。小さな花火では5m程度、大きなものでは500m以上も確保しなければいけない花火もあります。
この距離がなぜか都道府県によって異なります。例えば、3号玉。大体120m程度打ち上がり、半径30~40m程度に開く花火ですが、愛知県では花火の打上場所を中心として半径100mの人が入らない安全な距離を確保しなければなりません。これがお隣の静岡県では半径50mでOKです。ただ、私は静岡県の3号玉が愛知県の3号玉の半分程度の大きさしかないとは聞いたことがありません。
さらに不思議なのものに、「許可申請」が必要か、「無許可」でよいのか、というのがあります。
これは、一定量までであれば「許可申請」は必要なく、「無許可」で花火を消費しても良い、という規則で、この一定量は全国共通で決まっています。ちなみに、「許可申請」には大きな労力(2人日+1ヶ月程度の待機期間)が必要なため、無許可で済ませられる場合はそれで済ませます。
具体的な玉数が定められているため、基本的には分かりやすいルールですが、これが「演出効果用花火」という分野になると、とたんに厄介な存在になります。「演出効果用花火」とは、例えばコンサートのステージ脇などでシュッと噴き出す、ドラゴンのような小規模の花火のことです。
例えば愛知県では、「演出効果用花火」を使用する場合、「舞台演出用なら良いが、結婚式の場合は許可が必要」という条例があります。これがもう何が何だか…。
舞台と結婚式で何が違うんだ、ということには目を瞑っておき、この条例に基づけば、同じ花火を消費してもコンサートの場合は無許可でOK、結婚式の場合はNG、ということになります。
では結婚式後の披露宴は?となると、なぜかOKの市町村とNGの市町村が出てきます。
そもそも、結婚式と披露宴を分ける発想が素晴らしすぎます。最初にこれを許可権者さんに質問した人は相当にひねくれていると思います。条例にあるのは、あくまで「舞台演出用なら良いが、結婚式の場合は許可が必要」までです。さらにそれを通すという猛者っぷり。憲法解釈もこの猛者に任せたら良いかもしれません。
しかし許可権者さんはその性質上、前例のあることをなかなか断れませんので、決断には苦渋を伴ったことでしょう・・・。
一応「許可申請」が必要かどうか、各市町村さんの所管の許可権者さんに毎回確認はするのですが、何度受けてもこの指示だけは、許可権者さんと共に笑ってしまいます。説明をする方も聞く方も、アホらしくなってきます。お互い、8割自嘲です。
ということで、このままでは愚痴で終わってしまうので、ここは結婚つながりでもうひとつ。
一昨年、8号百雷付万雷を奉納した豊川市小坂井町菟足神社百雷三人衆の1人がご結婚されるので、弊社では贈答用の模型を作成致しました。
これが何も問題なく、自嘲もせずに済む最高の花火演出かもしれません。
山田さん、ご結婚おめでとうございます.
これからも末永くお幸せに!